ザック・スナイダーの話
映画監督。
スタイリッシュかつバイオレンスな映像が特徴的。今回は彼が監督した四作品について適当に語る。ネタバレは、たぶんなし。
ドーン・オブ・ザ・デッド
ゾンビが 出てくる ので殺す。
なんか知らんけどゾンビが大量発生。どうやら人から人へ感染していくタイプらしく、街はそこら中ゾンビまみれ。怖ろしい。しかもこのゾンビたち、速い。すごく速い。全力疾走してくる。腕力も強い。人、かじる。物、こわす。それほど強いゾンビが掃いて捨てるほど大発生しているのだがらさあ大変だ。そこで何人かの男女が運良くショッピングモールにたてこもることに成功。果たして彼らの運命はいかに。という話。
まず、ショッピングモールでサバイバルというシチュエーションがよい。俺もゾンビが街にあふれたらショッピングモールに逃げ込むことにする。楽しそうだ。実際、映画の登場人物たちはわりと気楽に過ごしている。ゾンビ大発生+ショッピングモールで遊び放題という非常にロマンあふれる状況は、誰もが布団の中で妄想したくなるような魅力を持っている。特に好きなシーンは、中盤にあるショッピングモールで生き残った人々が牧歌的に暮らしている映像が軽快な音楽とともに流れていくところ。屋上からゾンビ撃ったり、セックスしてみたりと、死の一歩手前にいるのに自分たちの置かれた状況を楽しんでいるのだ。このシーンを見ているとわーいいなーって気分になる。前半のせっぱ詰まった状況から一転、つかの間の安らぎを手に入れた人たちの安心感とこれはこれでいいんじゃねえのという投げやりな感じが伝わってくるいいシーンだ。
このあと彼らはショッピングモールを脱出して新天地を見つけようとするのだが、ここでいよいよ脱出に使うため改造に改造を重ねたバスが登場する。対ゾンビ用に特化されていて、とても変態的な外装と機能を備えているたまらない一品だ。
ゾンビがたくさん出てくるけれど、ホラーというよりはアクションとバイオレンスに重点を置いた作品なので、多少グロテスクなものが平気なら誰にでも勧められる一作だ。変態的なバスが見たい人もぜひ。
300
兵士が 出てくる ので殺す。
時は紀元前。スパルタはペルシャとの開戦を迎えようとしていた。大量のペルシャ兵を迎え撃つのはたった300人のスパルタ兵。しかしスパルタの兵はどいつもこいつも屈強な精鋭中の精鋭だった。という話。
とにかくスパルタ人が強い。ほぼ半裸なのに強い。幼少時から剣の稽古をつけられていたり極寒の地に腰布とヤリだけで放り出されたりムチでしばかれたりと、モンスターファームだったらモンスターが家出してるくらいひどい教育をされているせいか、やたら屈強に育ってしまった男たちが300人。これでは数万人にもおよぶペルシャの軍も苦戦せざるを得ない。しかしペルシャの軍勢も負けてはいられない。世界中から集めた珍奇な戦士たちが大集合、動物だってやってくるぞ。それでもスパルタ人は倒せない。地獄のスパルタ教育を受け、幼い頃から暴力のプロフェッショナルとして育てられてきたスパルタの王、レオニダスと彼の率いる戦士たちがそう簡単にやられるはずはないのだ。それでもペルシャの王クセルクセス(やたらでかい)は引き下がらない。色モノだけではだめだと踏んだのか、とうとう「不死の軍団」と呼ばれるつわものたちが登場する。漆黒の衣服に銀色の仮面が映える。血で血を洗う戦いのゆくえはいかに。
とにかく戦闘シーンがかっこいい。スローモーションと早回しという二つの演出が殺陣を彩る。この映画はスパルタの男たちがいかに格好良く敵をぶち殺すかということに重点が置かれているに違いないので、戦闘シーンには並々ならぬ迫力がある。ほとばしるバイオレンス。切られた首が落下するシーンまでスローモーション。断面もあるよ! ひたすら敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げる話なのでグロテスクな場面も多い。血があまり飛び散らないので下品な感じはあまりしないが、残酷なものが苦手な人は避けたほうがいいかもしれない。去年テレビで放送されたが、かなり編集されていた。残酷な場面が平気ならひたすらかっこいい戦闘が楽しめるはずなので、派手な殺陣が見たい人、スパルタ人の腹筋にときめける人はぜひ。
ウォッチメン
ヒーロー 出てくる ので殺す。
もしコミックに出てくるようなヒーローが実在して、歴史が変わっていたら。そんな歴史改変SF映画がこのウォッチメンだ。舞台は冷戦時代のアメリカ。かつて仮装をして自警団をやっていた者たちがいた。その後彼らは引退し、新たな世代がヒーローとして活躍することになる。それがウォッチメンとよばれるヒーロー集団だ。その中には一人、引退することなくヒーローを続けていた「コメディアン」という人物も含まれている。彼らの活躍によりアメリカはベトナム戦争に勝利。しかしその後、ヒーローたちによる活動は法律で禁止されてしまい、ウォッチメンは解散となった。そんな中、ウォッチメンの元メンバー、コメディアンが何者かの手によって殺害される事件が発生。同じく元メンバーである「ロールシャッハ」は、彼の死の真相を追い始める。という話。
殺伐とした雰囲気が特徴的。死の真相を究明するという点は、ある種のミステリでもある。それにしてもすごい話だ。登場するヒーローはどいつもこいつもちょっとおかしい連中だし、ヒーローがいたからといって世界が平和になるわけでもなく、彼らの存在意義すら疑わしいという状況でヒーローものをやろうとするのだから、どこかおかしな話になるに決まっている。こういうのをアンチヒーローっていうのだろうか。ヒーロー同士の人間関係も愛憎入り混じった複雑なものになっている。何でこいつら好きこのんでヒーローなんかやってたんだという疑問すら湧いてくるほど、ヒーローらしからぬ人物たちが続々登場するのだ。しかしそれでもヒーローをやり続けるにはどうしたらいいのか、そして冷戦という時代において、どう戦うことができるのか。その答えは作中で明示される。アンチヒーロー・歴史改変・冷戦時代という三つの業を背負ったこの物語、かなり面白いので未見のかたはぜひ。ドンパチもあるよ!
ガフールの伝説
フクロウ 出てくる ので殺す。
いや、あんまり死なない。この映画は児童文学を原作とした、少年少女が見ても大丈夫なように作られている3Dアニメーション映画なのだ。だからバイオレンスな場面はあんまりない。血も出ない。どういう話かというと、フクロウの少年が邪悪なフクロウ軍団にさらわれて、反乱したりする。だいたいそんな話。フクロウに文明があるところが面白い。ほとんど人間と変わらない生活をフクロウが送っているのだ。火を扱えるので、鍛冶をやって鉄のかぎ爪を作り出すというフクロウにあるまじき行為を簡単にやってのける。賢いとかいうレベルではない。世はフクロウの天下なのだ。ちなみに他の動物も出てくるが、活躍するのはやはりフクロウである。なぜかというと、この世界においてフクロウは特殊な能力をもっているからだ。ガンダムでいうところのニュータイプと同じような特殊な感覚が存在するらしく、その力はフクロウの「左脳」で発揮されるらしい。だから作中では、やたらと「左脳で感じろ」「左脳で感じろ」というセリフが登場する。スターウォーズでいうところの「フォースとともにあれ」ってやつだ。どういうふうに左脳を使っているのかは不明だ。きっと風が読めたり直感が鋭くなったりするのだろうが、いまいち役に立っているのかどうかわからない。特殊なエフェクトが入るわけでもなく、ただ飛んでいるだけだからだ(一度だけ超スローでかっこよく飛んでいるシーンがあるけど、それきり)。しかし「左脳で感じろ」というフレーズが面白いため、何ら問題ない。
フクロウ同士の戦闘シーンは相変わらずのスナイダーっぷりで、スローモーションが多用され金属の「シャキーン」という音もたくさん入る。こういうところは、しっかりとかっこいい。3Dで再現されたリアルなフクロウ同士の戦いが観たい人、定期的にフクロウを見ないと喀血してしまう人におすすめの一作だ。左脳で感じろ。
こんな感じです。特に大作の「ウォッチメン」がおすすめです。ヒーローとIFの歴史という組み合わせにときめきます。左脳で感じろ。それから四月には新作の「エンジェルウォーズ」(原題:Sucker Punch)が公開されます。精神病院で美少女が妄想と戦うという面白すぎる設定なので、たいへん期待。