December 31, 2011

ペイルライダーの話



著:江波光則


籠絡されてしまった。
まず、表紙の女の子がかわいいということに警戒すべきだった。ライトノベルの表紙絵、そこに描かれているキャラクターを魅力的だと思ったことなんて、まずなかったのだから。

「孤高の青春破壊小説!!!」というオビの惹句はどう考えても間違っている。裏表紙の「転校経験豊富な享一は、他人と親しく接することはせず、最終的にはいつも人間関係を破壊してしまうような男だった」「担任教師の蒔絵が大学への推薦枠を餌に、生徒へ密告を奨励、相互監視によるクラス統治を試みていたのだ」「衝撃の展開が待つ、ノンストップ青春破壊小説!!」という文からは想像もできないくらいボーイミーツガールじゃねーか。びっくりだよ。
いや、もうちょっと凄まじい、というか大惨事みたいなのを想像してたからいけないのであって、決してひどい詐欺にあったような気分にさせられたわけではない。けっこうな惨事も起きてるし、むしろこれはこれで、というか良い。

まず主人公が良い。表紙の彼、どう見ても好青年とは言いがたい彼である。なんと彼はブロガー(どうかbloggerと発音して下さい)なのである。しかも映画の感想系ブログをやっているのだ。その上ブログ名が「プロジェクトメイヘム」。この時点でかなり好感が持てる主人公像であることがわかる。とあるアニメ映画を罵倒したらブログが軽く炎上してしまったというところもポイント高い。ちなみに彼は、学校では非社交的だがネット関係の人たちとは普通に仲睦まじく交流している。そんな彼がオフ会で好きなアニメ映画を聞かれ、真っ先に出した答えが「スキャナーダークリー」。いい趣味じゃねーか。国産のものではと聞かれると、「もののけ姫」。理由は「首も飛ぶ」からだと。このやりとりには大笑いしてしまった。どう見てもカタギではない。こういう友達が一人は欲しいものです。

それからヒロインだよヒロイン。この俺が女子高生にグッとくるとか、そうそうあることじゃねえぞ。しかし見ろよこの表紙の女の子を。片目が隠れる少し野暮ったい髪型と、クールな眼鏡。リュックサックをギュッと握る手。スカートは例によってうんざりするほど短いが、人形のように細く、ツヤを強調しすぎない塗りの脚。かわいいじゃねーか。しかもビジュアルだけでなく中身もいいなんてことがあっていいのか。自分のいる世界をちょっと遠くから眺めているような視点の持ち主で、気になった人にはいきなり自分の好きな漫画を渡してくる女の子なんて最高だろうが。こんな子なら久しぶりにボーイミーツガールな気分にもなってしまうだろうが。
それにしてもまさか、ちょうど俺が「この子階段から落ちないかなー」思っていたところで階段から落ちてくれるとは。びっくりしたよ。びっくりしすぎてウソかと思ったよ。書いてあることを疑ってしまったよ。この作者、読者の趣味がわかってやがるな、わかっていてなおかつそれを突きつけてくるとか、勇気がありすぎるな、なんてことを思ってしまった。このシーンの時点で俺は完全に籠絡されています。こういう子が階段から落ちる話、好きです。

あと暴力シーンが大変よかった。痛みだとか感触だとか、身体感覚に重点を置いた暴力描写はやっぱりいいですね。主人公はここで暴力を振るってほしいと思ったときに暴力を振るってくれるし。このあたりも籠絡された理由の一つだ。たまらんわ。

それから、オフ会によく出てくるつまらないブログを書くサラリーマンの話は、「ああ~」ってなった。

がんばろう。